夜、お布団にもぐりこんで食べものの本を読む時間が好きだ。
昨夜は、以前から少しずつ少しずつ読み進めている玉村豊男さんの「料理の四面体」をベッドに持ち込んだ。
そこで紹介されていた草野心平さんの「心平粥」なるレシピがシンプルで面白い。
お鍋におちょこ1杯の生米、おちょこ1杯のごま油、おちょこ15杯の水を入れ、2時間とろ火にかけたらできあがりだという。
平日の夜に2時間かけて夜ごはんを用意するのは少し億劫な気もするが、「コメ粒のひとつひとつをゴマ油の膜がしっかりと覆ってコメのうまみを確保している」という部分をどうしても自分の舌で味わってみたくて、翌日作ることにした。
「料理の四面体」に書かれている「おちょこ」がどの程度の大きさなのかわからないが、とりあえず比率を守れば問題ないだろう。カロリーを低めにおさえるため、各材料は次のような量にした。
【材料】
生米 大さじ1
押し麦 大さじ1/2
ごま油 大さじ1と1/2
水 大さじ22と1/2(345ml)
お昼時に、社食で押し麦のサンプルをいただいたので、生米に混ぜて早速使ってみる。
丸っこくてかわいい。食物繊維たっぷりの、優秀な子だ。
こんなに入れてもいいのだろうかと心配になるぐらいの水の量。
ごま油もたっぷりと。
少量でも存在感を放つ、九鬼の純正胡麻油こいくち。ふたを開けた瞬間の濃厚な香りが気に入っている。
とろ火にかけている間に、部屋の掃除をしたり、シャワーを浴びたり。材料をお鍋に入れてしまえば後は待つだけなのでお手軽だ。火が消えてしまっていないかだけ、時折確認する。
正直、火をつけたままシャワーを浴びるのは少しどきどきしたけれど。
1時間ぐらいで土鍋からパチパチと音がし始めたので、ふたを少し開けてみたらもうほとんど水分が飛んでしまっていた。火が強すぎたかもしれない。それとも、材料が少なかったのか。
さらに大さじ2ほどの水を加えて、もう少しだけ火にかけておくことにした。
その間に、大根とこんにゃくの煮物を作る。
完成。
今夜の献立は、心平粥、大根とこんにゃくの煮物、キムチ納豆。
濃い色と香りが食欲をそそる。お気に入りのごま油を主役にしてあげられる一品だ。
一口食べて、その甘さに驚いた。ごま油の甘み、お米と押し麦の甘みがもっちりと絡みあう。特に、水分を吸った押し麦のむにむにした食感はくせになりそう。
塩をひとつまみ振りかけて軽く混ぜると、さらに食べごたえが増す。
心平粥が予想よりも早くできあがってしまったので慌てて作った煮物も、味が染みていたのでよかった。
醤油とみりんでシンプルな味付け。粉山椒がよく合う。
粗食の日は、大抵梅干を食べる。吉祥寺のpukupukuで買った古い絵付け皿にちょこんと乗せるのが好き。
それから、キムチと納豆をまぜまぜしただけのキムチ納豆で、発酵食品の恩恵を存分に受ける。食後にはヨーグルトが待っている。
心平粥は「コメ粒のひとつひとつをゴマ油の膜がしっかりと覆って」という表現が本当にふさわしい、まろやかでもったりとした、味わい深いお粥だった。