ホットクックを使って魚の煮付けを作ろうと思い立ち、会社帰りにスーパーへ向かった。
衝動に駆られてホットクックを購入したはいいものの、まだ2回しか使っていないのでそろそろ活用しなければという気になったのだ。

職場近くのスーパーはいわゆる高級スーパーに区分される店舗で、商品に伸ばした手を思わず引っ込めてしまうぐらいの値がつけられている。普段行くスーパーのおよそ2倍ぐらいである。
それでも、他の店舗ではなかなか見ない色艶の食材があったり、各地の伝統野菜が置かれていたりと魅力的な売り場なので、時々足を運んでしまう。

夜21時近くなると、パックに割引のシールがぺたぺたと貼られ始める。
この時間に売り場を歩き回るのはとても楽しい。同じ「30%引き」でも、お得感が近所のスーパーとは全然違うのだ。

この日は、半額になった長崎県産の天然真鯛に出会ってしまった。
蛍光灯に照らされて複雑な色味の鱗がきらめく真鯛の切り身は、一切れで元値1,000円以上。
これは尋常ならざるお得感!と、思わずかごに入れる。

煮付け用に魚を探していたのに、いざ艶やかな真鯛を目にすると、せいろ蒸しでシンプルに調理したくなってしまった。
ふっくらと蒸しあがった真鯛を、大好きなパクチーで香り付けして食べてみたいという衝動がむくむくと膨れ上がってきたのだ。
2束400円ほどするパクチーを、逡巡を振り払うようにして思い切りかごに入れる。いついかなる時でも、惚れた側が弱いのである。

【材料】
・天然真鯛の切り身 1切れ
・しょうが 1かけ
・にんにく 1かけ
・ねぎ 1/2本
[ソース]
・醤油 大さじ1
・酒 大さじ1/2
・ごま油 大さじ1/2
・オイスターソース 小さじ1

まずは薬味をざくざくと切っていく。
しょうがは千切りに。
にんにくは、半かけを薄切りにして、もう半分をみじん切りにする。
薄切りのにんにくは食感にアクセントを加えてくれるし、みじん切りにすると香りがよく立つ。
ねぎは、ななめ薄切りに。2、3mmほどの厚さにすれば、「しんなり」と「しゃきっ」との中間ぐらいに落ち着く。

照宝のせいろを久しぶりに引っ張り出してきて、キッチンに置いた。
竹の香りがふんわりと漂い、きゅんとする。

せいろに平皿をセットし、薬味のうち2/3ほどを広げる。
ねぎは、ほんのり赤い山形の伝統野菜、平田赤葱を使用。火を通すと糖度が上がるらしい。
角度を変える度にきらきらと光を弾く真鯛の切り身を、皮目を上にして薬味に乗せる。

img_2665

残った薬味を真鯛の上からそっと散らしたら、醤油、酒、ごま油、オイスターソースを順に回しかける。
ナンプラーを使えばエスニック風になるし、みりんや昆布つゆを使って和風な味付けにするのもよい。この日は中華料理のイメージでソースを作ってみた。

後は、せいろを鍋の上にセットして中火で8分間ほど蒸らすだけでよい。
せいろもホットクックに負けず劣らずのお手軽調理器具なのだ。
しかしまあ、ホットクックを活用しようという最初の決心はどこへやら。近いうちに必ず使ってあげないと。

8分後、ふたをそっとあけると、途端に生姜やにんにくの香り、せいろの竹の香り、ごま油やお醤油の香り、パクチーの香りなんかが混ざり合って鼻に届き、食欲をそそる。
蒸しあがった真鯛の上に、ちぎったパクチーの葉を散らせばできあがりだ。

img_2663

ふっくらした身をお箸でそっとほぐす。瑞々しくしっとりとした魚の食感が残っている。
ねぎや生姜、にんにくを身にたっぷり乗せて食べると、しゃきしゃきとした食べごたえがいいアクセントになる。

淡白な白身には、濃いめのソースがよく合う。
さらに、シラチャーを少し加えると、辛さがきゅっと際立つ東南アジア風の味わいに変わる。

赤い蓋のシラチャーは「スーパーホット」で、緑の蓋の通常タイプとは辛さが段違い。
少量で顔が熱くなる。パクチーとの相性も抜群だ。

img_2664

せいろで蒸すだけで、お魚と香味野菜が食卓の主役に早変わり。
スーパーでの決断は間違っていなかった、と小躍りした夜だった。

img_2305

スポンサーリンク