台湾の食堂でよく目にする「牛肉麺」の文字。日本でも、少し前に中国からやってきた「蘭州牛肉麺」がブームになった。

牛骨スープに牛肉の塊がゴロゴロと入ったこの麺料理は、どうやら台湾の国民食らしい。東門駅から少し歩いたところにある「永康牛肉麵」は人気店で、一瞬並ぶのを躊躇するほどの行列ができていた。家族連れや友人同士、カップルなど、客層は様々だ。

一口に「牛肉麺」と言っても味はどれも同じというわけではなくて、「永康牛肉麵」では「紅焼牛肉麺」か「清燉牛肉麺」かを選べる。「紅焼牛肉麺」は醤油ベースのピリ辛スープで、「清燉牛肉麺」の方は塩味だという。

行列に並びながらガラス越しに店内の様子を観察すると、多くの人が「紅焼牛肉麺」の方を食べていた。器の縁ぎりぎりまで赤みがかったスープが注がれていて、食欲を刺激する。

それから、牛肉麺と一緒にあちこちのテーブルに乗っているのが、小さな蒸籠だ。中には、ごはんのようなものが入っている。入り口付近のメニューを見たところ、それは「粉蒸排骨」という料理らしい。日本語では「スペアリブとサツマイモのもち米蒸し」と書かれている。

客席は2階にもあるため、列は思いの外するすると進む。行列に店の入り口を潰されるような形になってしまっている隣のカフェの店員さんが、試飲用のカップを乗せたお盆を手に、並んでいる人に声をかけて回っている。商魂たくましい。前に並んでいた男子学生のグループが、試飲後にカフェのお茶をテイクアウトしていた。捉えようによっては、ピンチもチャンスになるということだなあ、と感心してしまう。

しばらくして、2階席に案内された。テーブルがぎゅうぎゅうに並べられているから、人口密度が高くて賑やかだ。

メニューには「紅焼牛肉麺」の他に、牛筋の入った「紅焼牛筋麺」もある。どちらも食べてみたいと悩んでしまう食いしん坊が多いのか、「紅焼半筋半肉麺」というメニューがあったのでそれの「小」を注文した。それから、もちろん「粉蒸排骨」も。卓上の注文表にチェックを入れて店員さんに渡す。

小サイズなのにかなりの量なので「大と間違えたのかな……」と少し怯えつつ、スープを一口飲む。期待したとおりのピリ辛。牛骨由来の深いコクがあって、このスープを味わえただけでも並んだ価値があった。麺はやわらかで、スープとよく馴染む。

直前に「小茅屋」と「天津蔥抓餅」に行ってお腹が満たされつつあったので、ゴロゴロと入ったお肉の量と大きさにまた怯える。特に牛筋の大きさは想像以上。日本の牛筋煮込みに入っているような可愛らしいものを想像していたのだけれど、ぎょっとするほど大きい。

恐る恐る食べてみる。まず、牛肉のやわらかさに驚く。見た目で、少し固いんじゃないかしら、なんて思ってしまった自分を殴りたい。口の中でほろほろとほどけて、あっという間に消えてしまう。牛筋は、THE・コラーゲンの塊。こちらも、口に入れたらとろんと消えてしまう。

「粉蒸排骨」は、甘じょっぱいような味のスペアリブにもち米が絡んでとても美味しい。日本では未体験の料理だ。下の方にごろごろと入っているサツマイモはとても甘い。

とてもビールに合いそうなので目を凝らしたけれど、店内に見慣れた瓶を見つけられず諦めた。後から調べたところ、どうやらビールはあったらしい。もう一度行って、今度こそビールを飲まなくちゃ。



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