数ヶ月ぶりの光麟堂。前回訪れたのは、お店が新規開店した直後だった。繊細で美味しいスープ、という印象が残っていたので、この日も期待に胸を高鳴らせながらカウンター席にちょこんと腰をおろす。

光麟堂のスープは、鶏のコクをじっくりと感じさせながら、和食のような繊細さも併せ持つ。着物に身を包んだ京美人のように、華やかさと奥ゆかしさを兼ね備えている。

器に少し顔を近づけると、ねぎの香りが爽やかに鼻先をくすぐった。すれ違った後の残り香のように控えめで、印象だけを鮮やかに残していくような、そんな香り。

味が濃いとか薄いとか、そんな思考に至りようがない。すべてが上手く調和するように完成された一杯。熱々のスープを何口すすっても、これが言い過ぎだなんて思わない。大好きな、大好きなラーメンなのである。

こっくりとまろやかなスープの味わいにアクセントを加えるのは、緑色が鮮やかな大葉やカイワレ。穂先メンマは歯ごたえとやさしい味わいを楽しめた。卓上のミル挽き胡椒を加えると、スパイシーな香りがふわりと立ち昇る。

店内の貼り紙には、全粒粉の麺を使用、と書かれている。カロリーが低く、ビタミン・ミネラル・食物繊維・ポリフェノールなどの含有量が多いそう。細く、透き通った麺の中に、全粒粉のつぶつぶが見える。茹で加減は少し固めで、その弾力が食べごたえを増してくれる。店内には私の好きな三河屋製麺の箱が。美味しさの秘密はここにもあったのか。

幾度お箸やれんげを口に運んでも、食べ飽きないし飲み飽きない。スープが底からこんこんと湧き出てこないものか、といじましく器を覗き込む始末。椀盛のような印象すら受けるラーメンなので、日本庭園を眺めながらつるつるとすすりたくなる。

分厚い豚バラチャーシューは、思わず見惚れてしまうほど美しい桃色。チャーシューをつつむあぶらが、照明の光をきらきらとはね返す。丼の真上に設置された黄色味がかった照明は、まるでスポットライトのよう。ラーメンがきれいに見える照明だなあ、と思う。目を凝らすとスープの表面が虹色に輝いていたりして。

ねぎとチャーシューが乗ったミニチャーシュー丼は、甘辛いタレがライスの下の方まで染みている。胡椒がぴりっと効いていて、ラーメンとは違うジャンクさを楽しめた。

食べ終えてお店を出ると、思わず「ほう」とため息がもれる。私にとって光麟堂の塩ラーメンは、おなかだけではなく心まで満たしてくれるような、そんなラーメンなのだ。

光麟堂ラーメン / 御成門駅汐留駅新橋駅

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