初めて、岡山ラーメンを食べた。
地名を冠したラーメンには浪漫がある。遠い土地、行ったことのない土地のラーメンを前にすると心が躍るし、前に訪れた場所で食べたご当地ラーメンの味をもう一度東京で楽しむのも好きだ。麺をすすりながら、いまだ胸に残る旅先の風景、澄んだ空気の美味しさ、そしていくつもの出会いを思い出す。
後楽本舗の岡山ラーメンがどれほど現地の味に近いのかはよくわからない。調べると、それほど明確な「岡山ラーメンらしい味」というのは定義されていないようでもある。なんにせよ、食べ終わる頃にはここの味がすっかり気に入ってしまった。
スープにはこっくりとした甘みがあり、徳島ラーメンを少しあっさり仕上げたような味。動物だしよりも、醤油を強く感じる。薄いあぶらの層でそっと閉じられており、やさしい味わいである。
甘みを感じさせるスープの長所は、ライスとの相性が良いところ。そば定食(720円)はラーメンとライスのセットであるため、これを頼まない手はない。ライスの量はそれほど多くなく、ランチに軽く食べるにはぴったりである。ライスにしっかりとスープを吸わせてからいただけば、美味しいスープを存分に楽しめる。
さらに、そば定食には餃子が3個ついてくる。餡の歯ざわりが良く、これもまたライスに合い、お箸を持つ手が止まらない。この場にビールがなみなみ注がれた中ジョッキがあればさらに素晴らしいのだけれど。まだ太陽が眩しい時間帯なので、ぐっと我慢である。
ライス、麺、餃子、ライス、麺、餃子、と幸せなループが続く。やわらかい細麺は束になると弾力を持つので、お箸でわさっと持ち上げ、一気にすする。チャーシューにはしっかりと脂がのっており、見た目どおりのジューシーな味わいである。こってり具合を中和してくれるのは、辛味のあるねぎ。バランスの良い一杯だった。
「岡山ラーメン」なるものは私の中でまだまだ謎に包まれているので、解き明かしに行ってみたいな、岡山へ。