台湾では、長い行列のできている屋台をよく見かける。東門駅付近にある「天津蔥抓餅」もその一つだ。
「蔥抓餅」が何かもわからないまま、ふらふらと列の最後尾についた。30人ぐらいは並んでいただろうか。お店のおばちゃんが、数人ずつまとめて注文をとっている。小さな紙に、頼まれたメニューの番号をささっと書き付けて、ものすごいスピードで調理場まで持っていく。おばちゃんの行く手を遮らないように、気をつけながら並ばないといけない。
驚くほどのスムーズさで蔥抓餅ができあがるので、行列はするすると動く。並びながら調べたところ、蔥抓餅というのは小麦粉で作った生地を焼いたもので、ネギが入っているらしい、ということがわかった。軽くおなかを満たすのに、ちょうどよさそうだ。
列の隙間からメニューを眺める。ありがたいことに日本語表記もあった。卵やハム、チーズなど、トッピングにもバリエーションがあってとても悩ましい。私は「原味(プレーン)」を、夫は「起司加蛋(チーズと卵)」を注文することにした。
何年ここで蔥抓餅を作っているのだろうか。丸められた生地を機械で平べったく潰すのも、それを美しいきつね色に焼き上げるのも、くるりと丸めて紙袋に入れるのも、すべての動作に無駄がない。きびきびと動く手に見とれていたら、いつの間にか列の先頭に来ていた。
お店のおじちゃんに「Spicy?」と聞かれたので反射的に頷くと、スパイシーそうなソースを夫の蔥抓餅にたっぷりと塗ってくれる。なぜか「原味」の方には塗ってくれない。
「原味」は表面がカリッと焼かれていて、モチモチの生地をシンプルに楽しめる。控えめな塩気が、「もっと食べたい」という気持ちを誘う。散りばめられたネギは、ほのかに香ばしい。
「起司加蛋」は、チーズと卵が巻き込まれているので、「原味」よりふっくらとした仕上がりだ。スパイシーなソースとチーズがマッチしていて、ファストフードのような少しジャンクな味。やみつきになりそう。
軽食のつもりだったのに、十分おなかがいっぱいになってしまった。恐るべし、蔥抓餅。