東門駅周辺は、パワフルなエリアだ。タピオカ屋や食堂、雑貨屋などが建ち並び、多くの人が行き交う。小綺麗で明るい。よく晴れた休日に、ぶらぶら歩くにはもってこいの場所である。
駅から歩いて何度か道を曲がると、「小茅屋」の文字が書かれた大きな看板が見つかった。通りの明るさとは対象的に店内は少し薄暗く、入るのを少しためらう。しかし、お目当ての「紅油炒手」を食べるため、ここで引き返すわけにはいかない。
「紅油炒手」は、ラー油が効いたワンタンのことだ。辛い料理に目がない私はどうしてもこれが食べたくて、今回台湾に着くなり「小茅屋」へ向かったのだった。台湾の美味しいごはんについて書かれた本によると、このお店でもう一つ食べるべき料理は炒飯だという。
炒飯は、「火腿蛋炒飯」と「肉絲蛋炒飯」の2種類がある。「火腿蛋炒飯」はハムと卵の炒飯で、「肉絲蛋炒飯」は細切りにした豚肉の炒飯だ。ハムの塩気が効いた炒飯が好きなので、「火腿蛋炒飯」の方を頼んだ。
お店のお母さんは英語があまり得意ではないようで、息子だろうか、若い男の子に接客をバトンタッチした。壁のメニューを指差して注文すると、彼は「Ham?」「Spicy, OK?」などと英語で確認をしてくれる。
「紅油炒手」は、確かにスパイシー。そして、にんにくが笑えるぐらい効いている。器から、ぶわっと立ち昇るにんにくの香り。ワンタンの具にもしっかりとにんにくが効かせてあるし、スープは「生にんにくのスープ」と呼びたくなるほど。とても細かくすりおろされたにんにくが、溶かし込まれているようだ。
ワンタンの皮はつるんとしていて、舌触りがいい。夫と競うように食べた。ただ、夫はにんにくによって食道あたりが少し荒れたと言う。軟弱である。
「火腿蛋炒飯」は塩気がほどよい強さで、ビールによく合いそうだ。お米全体に油がしっかり回っていて、ベタつきがなく美味しい。こういう炒飯、家で作れたらいいのだけど。
スプーンにとった炒飯を、「生にんにくのスープ」に少し浸して食べてみる。塩気や辛さがいい具合に混ざり合って、禁断の味に。やみつきになりそうだ。結局スープを全部飲んでしまった。
東門の喧騒を忘れるような、小さな食堂。地元で愛される料理をゆっくり味わう昼下がりもいい。