一週間休暇をもらえたので、一人で石垣島へ行くことにした。

非日常な空間で飲んで食べてのんびりしたいなあ、海外は緊張して逆に疲れそうなので国内がいいなあ、暖かくて海がきれいだといいなあ、行ったことのない場所がいいなあ・・・と考えた結果、沖縄の離島が最適に思えたのだ。

仕事と愛犬のお世話に追われて、ろくに旅程の計画もしないまま出発日になってしまった。
とりあえず一つぐらい旅のテーマを決めておいた方がよいと思い、「八重山そばをめぐる旅」と題することにした。

1日目 島そば一番地

那覇経由でお昼過ぎに石垣空港へ到着し、離島ターミナル向かいのホテルミヤヒラにチェックインしたのが14時頃。早速Tシャツに着替え、リュックを背負って街に繰り出した。
目指すは、ホテルから歩いていける距離にある「島そば一番地」である。
青い空と刺すような日差しに、遠いところまできたなあとしみじみ。

ごはんどきを過ぎていたので先客はなく、広々とした4人席に腰をおろした。
500円の島そば(小)を注文する。

ところで、「八重山そば」とはどのような食べ物かご存知だろうか。
沖縄の有名な麺料理と言えば、豚の三枚肉が乗った「沖縄そば」や豚の骨付きあばら肉が乗った「ソーキそば」が挙げられる。
それらの麺料理と八重山そばの大きな違いはトッピングだ。
「島そば一番地」で麺の上に乗っていたのは、豚肉の細切りやかまぼこ、輪切りの島ねぎだった。店内の案内書きによると、それが八重山で昔から一般的に食されているスタイルだという。
三枚肉や骨付きあばら肉よりもボリュームが減るので、朝食や飲み会の〆、軽食にも最適だ。

麺のつるんと丸いフォルムがかわいらしく、食欲をそそる。
八重山そばの麺は茹で置きされているため、注文すると驚くほど早く提供される。
茹で置きでも麺が伸び切っているということはなく、ほどよい固さで、ぷつっと切れる食感が心地よい。

「島そば一番地」の八重山そばの特徴は、長時間煮込んだ石垣産の豚、石垣の塩、かつお節などから作られた、化学調味料不使用の味わい深いスープだ。
無着色、無添加だという麺の白さも、見た目のやさしさに拍車をかけている。
豚肉の細切りがほどよく塩味を効かせているので、物足りなさを感じることはない。

人生で初めて、「ピパーズ」なる卓上調味料を使った。
八重山で育つ実を粉状にした島胡椒で、八角のような甘さと山椒のような辛さを持つ不思議な調味料だ。
ピパーズの独特な香りが八重山そばのスープと相性抜群なのだが、この調味料については別の記事で詳しく書こうと思う。

1日目 なかよし食堂

離島ターミナルで自転車を借りて、観音崎まで向かうことにした。
いたって普通のママチャリだが、24時間借りて1,500円とお値段も安いのでありがたい。
夜など乗らない時は離島ターミナルの駐輪場に無料で停めておけるので、ホテルミヤヒラのように駐輪場がない宿に泊まっていても安心だ。

離島ターミナルから観音崎へ向かう途中に「なかよし食堂」があるので寄ってみることにした。
八重山そば、一杯500円。
店内は地元客が多い印象だ。

頼んでから10秒ぐらいで八重山そばが提供された。
今回めぐった店舗の中で一番早かったと思う。

「島そば一番地」のスープがやさしい味わいだったのにくらべ、こちらのスープは醤油がたった濃い目の味だ。
麺も黄色味がかっており、違いがはっきりしていて面白い。
一口に八重山そばと言っても色々あるらしい。めぐりがいがあるなあ。

豚肉の量も多く、男性の一人客が多いのも頷ける。
仕事の合間にさっとすすってエネルギー補給するのにもってこいのお店だ。

1日目 メンガテー

観音崎やフサキリゾートヴィレッジで海を見ながらのんびりし、途中牛汁を食べたりしながら石垣島1日目の夜を迎えた。

自転車を置き、徒歩で離島ターミナル周辺の繁華街をぶらぶらする。
こってり系の八重山そばをいただけるお店がこの辺にあるらしい。

地図アプリに従って建物と建物の隙間を進んだところにお目当の「メンガテー」はあった。
ただ、女一人かつ一見さんだとかなり入りにくい外観…!そしらぬ顔で一度通りすぎる。

立ち止まって、入るかやめるかしばし悩んだが、結局食い意地が勝った。
でももし東京だったら諦めてたかもしれない。

店内はかなり照明が暗めで、2組のおじさま方がおでんをつついている。
どぎまぎしながらカウンター席に座り、テレビを見ながらタバコをふかしているおばちゃんにそばを注文する。お値段は600円。

数分の後、目の前に器が置かれる。鼻をくすぐる動物のにおいにうっとり!
豚骨の出汁が強く出ている脂多めのスープの中に、大きな肉の塊がごろごろ入っている。食べ応え十分だ。麺はこれまでのお店よりかなりやわらかめ。

お店のおばちゃんたちがテレビのニュースを見ながら政治について話し合っているのを横目に、もくもくとそばをすする。
かなりディープな雰囲気だったが、こってりした八重山そばを楽しみたいなら「メンガテー」は外せない。勇気を出して入ってよかった。

2日目 来夏世

翌日、自転車を返却する前に「来夏世」へ行くことにした。
徒歩でもいけないことはなさそうだが離島ターミナルから少し距離があるので、自転車や車を使えると便利だ。

こんな場所に飲食店があるのだろうか、と不安に駆られながら住宅街を走っていると、木々で覆われた古民家風の建物が現れた。

広い駐車場に自転車を止めて店内に入る。
この日の営業は始まったばかりだったが、すでに中はだいぶ賑わっていた。
店員さんは女性ばかりで、きびきびした接客が気持ちいい。

八重山そば(小)を注文する。戸が大きく開け放された店内には、外から明るい日差しが差し込み、時折風が吹き抜ける。
お店を取り囲むように生い茂る木々を眺めながら、これぞ私のイメージしていた石垣島だなあと嬉しい気持ちに。
あまりの心地よさに、これだけ素敵なお店なのだからじゅーしーも美味しいだろうなあと、追加で注文してしまった。合わせて550円。

朝食を食べていなかったので、これがこの日の1食目。八重山そばのやさしい出汁が身体に沁み渡る。麺は少しやわらかめで食べやすい。

ピパーツとの相性も抜群だけれど、スープの完成度が高すぎて味を変えてしまいたくない、と少量しか使わず。卓上調味料大好き人間なので、こんなことは珍しい。

じゅーしーはごはんに味がしっかりしみており、ヨモギだろうか、混ぜ込まれた葉の香りが食欲をそそる。追加で頼んで正解だった。

石垣島では色々食べ歩いたが、一番のお気に入りとなったのがここ「来夏世」だ。
雰囲気含めて、沖縄の離島感を存分に味わえる。

3日目 八重山STYLE

石垣島3日目は、朝から夕方までシュノーケリングのツアーに参加した。
夜からはホタルツアーを予約している。
エネルギー補給のため、隙間の時間でいざ食べ歩き。

ユーグレナモールの端にある「八重山STYLE」は、800円で八重山まぜそばを提供している。
八重山そばではないのだが、気になってふらっと入店。
隣の「ビーチ」で白いタコライス(スパイシーで美味しすぎる!)をいただいた直後だったのに、シュノーケリングでたくさん動いたからか、まだおなかが空いている。

まぜそばの食べ方や、豊富に揃えられた卓上調味料との相性に関する店長のコメントなど、案内書きがとても充実している。熟読していたら、待望の八重山まぜそばが登場。

石垣島まできて、こんな可愛らしいまぜそばに出会えるなんて!
スープは豆乳ベースでとってもまろやか。女性も喜びそう。
けれど薄味といったこともなく、塩ダレが効いていてまぜそばらしいジャンクさがある。

「まぜそばは汁が少ないためコーレーグースはあまりおすすめしない」といった店長の親切な案内書きをスルーし(すみません)、卓上調味料を端から端まで少しずつ使ってみる。
店長イチオシのドラゴンペッパーがとにかく美味しい!合う!
オレガノやルーコラといったハーブと、島唐辛子やプリッキーヌ、ハバネロなどの辛味がブレンドされた調味料で、ふりかけるとよい香りがふわっと広がる。辛さは中途半端さがなく、とても刺激的。

店内でドラゴンペッパーを販売していたので、お店を出る時に購入してしまった。これは自宅でヘビーユースしたい。カレーにも合いそう。

4日目 明石食堂

三日目にホタルツアーで案内をしてくださったガイドさんとそのご友人の、石垣島一周ドライブに便乗させていただけることになった。

もし行きたいところがあれば言ってください、とおっしゃっていただいたので、車がないから今回の旅行では諦めるしかないなあと思っていた「明石食堂」を図々しくもリクエスト。

朝10時頃に待ち合わせて、まずはびゅーんと明石食堂まで向かうことになった。
開店前でも結構な人数が並んでいるとの噂も聞いていたので、どきどき。

11時過ぎにお店に到着。「名前書いておいてー!」と言われて走ったが、運よく待たずに入ることができた。
広々としたお座敷席でほっと一息つく。

ガイドさんのおすすめは蓋がしまらないほどボリュームのあるカツ丼らしいが、初めてならまずはソーキそばを食べるべきだそう。「ここのソーキを食べたら、もう他のソーキを食べられないよ!」とまで。
もし一人で来ていたら八重山そばを食べていたところだった。いいこと聞いた。

ソーキそばは、八重山そばより少しお高い850円。
麺の上に横たわるソーキの量を見て、それにも納得。

スープはこってりしていそうな見た目だが、一口飲んでみると想像以上にあっさりした飲み口で驚く。やさしさ、まろやかさが、存在感を発揮するソーキとよいバランスをとっている。

地元の方が絶賛するソーキは信じられないほどやわらかく、そっと噛むとほろりとほどける。ソーキのところどころが、とろとろしていたりぷるぷるしていたり。
確かにこれは必食のソーキそばだ。

おなかがたっぷり満たされて外に出たら、やはり行列ができていた。

八重山そばをめぐる旅、を振り返って

4日間の旅を終えて、「八重山そば」と一口に言ってもお店によってまったく違った個性が出るなあ、という感想を持った。
そういう類の料理は、食べ歩きの喜びが増える。

石垣島には他にも、石垣牛やヤギ汁など私の胸を熱くさせる美味しいものがたくさんあったため、行きたいと思っていた八重山そばのお店をすべて回ることはできなかった。
でも、それが石垣島を再度訪れるきっかけになると思えば、逆によいことかもしれない。

八重山そばをめぐる過程で、地元住民にまざって食事をしたり、とことんディープなお店で食事をしたり、離島の風を感じながら食事をしたり・・・と、石垣島の多様な食シーンを楽しむことができた。

ありがとう、八重山そば。また食べに行きます。待っててね。

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