小さな頃から、休日は必ず家族で出掛けるという習慣があった。父親が運転する車に乗って、埼玉や千葉、神奈川へ行ったり、時には静岡や栃木あたりまで遠出したり。温泉やショッピングモールでのんびり過ごすことが多かった気がする。大学二年頃に私がアルバイトを始めて時間がとれなくなるまで、ずっと続いていた習慣だった。

当時は、友達と遊んだりもしたいのに毎週出かけないといけないなんて……と不満に感じることもあったが、今考えるととても贅沢をさせてもらっていたのだと思う。美味しいものを食べたり、ほしいものを買ってもらったり、温泉に入ってリフレッシュしたり、たくさんの観光地を回ったり。

そして社会人になって初めて、あの休日は仕事をしている父親にとってなくてはならないリフレッシュの時間だったのだなあと痛感した。私も、休日はどんなに疲れている時でもどこか遠くへ行きたい。非日常を感じてリフレッシュしたい。家でごろごろと一日を過ごすのが嫌いなところは、父親に似ている。

だから、遅く起きてしまった土曜日は少し塞いだ気分になるのである。この日もそうだった。近場で良いのでどうしてもどこかへ行きたくて、以前から気になっていた神楽坂のla kaguへ行くことに決めた。

せっかくなので神楽坂ランチを堪能したかったのだが、すでにもう夕方。この時間にランチを楽しめるのはやはりラーメン屋さんかなあと思い至り、田中屋へ行くことにした。二度目の訪問である。

店先では、店員さんがせっせと大きな豚骨を運んでいる。あの子達からとれたスープをこれからいただくのです、ふふふ。

以前は中華そばを食べたので、今回はねぎそばを注文。最近ラーメン続きになってしまっているため、少しでも多く野菜を摂取したい。ヘルシー志向。などと言いつつ、前回から気になっていた明太子ごはんも注文し、ひかるくんとシェアすることに。結局、炭水化物に囲まれるという幸せを味わわずにはいられないのである。

田中屋のラーメンが持つ武器は、繊細で奥深いスープだと思う。最初の一口を味わうと、思わず溜め息がもれる。すすった瞬間は薄味のようにも思えるが、時間差でじんわりと豚の旨味が顔をのぞかせる。くさみはまったくなく、信じられないほど澄んだ清湯。

ぴろぴろとした麺は、透明がかったようにも見える。量が多く、ぎゅっぎゅっと噛みしめるとほのかに甘みを感じた。時間の経過とともにスープを吸っていき、ずっしりと重みを増す。

ほろほろとやわらかいチャーシューにはしっかりと味がついており、端を少しかじるだけでも良いアクセントに。
麺の上にわさわさと乗った細切りのネギは、胡椒が効いた味付け。辛味が強めなので、まろやかなスープとの相性が抜群である。

卓上の唐辛子をスプーン一杯程度入れると、スープがぱっと赤みを帯びてきれい。刺すような辛さと香りが加わる。

DSC06697

明太子ごはん、注文してよかったなあ。田中屋のスープは、私の思う「ライスに合うスープ」とは少し違うのだけれど、ラーメンの合間合間に明太子ごはんを頬張るのはとても満足感を得られる行為だった。ちょこっとの背徳感とともに。

期待していたla kaguはお高い商品が多くて、眺めているのは楽しかったけれど足繁く通う場所ではないなあという印象だった。値札を見るたびに「ぎゃっ」と声をあげてしまう庶民である。それよりも、向かいにあるかもめブックスがとても楽しかった。本のセレクトショップ、というような雰囲気で、本棚を見ているだけでわくわくした。

最近は本を買う時に保守的になってしまうことが多くて、基本的に知っている著者の本しか手に取らないのだけれど、素敵なチョイスの本棚に出会うと少し冒険してみたくなる。お気に入りの本が多く並んでいる辺りにあった、知らない著者の本を一冊購入してみた。

神楽坂は時間がゆっくりと流れる素敵な町だなあ、と思う。リフレッシュしながら休日をのんびりと過ごすのにはぴったり。

田中屋ラーメン / 神楽坂駅牛込神楽坂駅飯田橋駅

スポンサーリンク