ざあざあ降りの雨の夜、たまらなくらーめんが食べたくなった。気づけば最近また、毎日毎日らーめん屋さんへ通っている。

少しやさしいテイストのらーめんが食べたかったので、2年半ぶりに中野のさいころへ行くことにした。わりと近くに住んでいるのに、引っ越してから今まで足を運んでいなかった。うーんもったいない。

中野駅南口を出て、アーケードの下を真っ直ぐ歩く。雨に降られないので嬉しい。五叉路の辺りで多少道に迷った末、さいころにたどり着いた。あまりにもおしゃれな外観なので、バーだと思いそのまま通過しかけた。

店内に入ると、ようやく以前訪れた時の記憶がよみがえった。あの日は昼間から延々とお酒を飲み続けていて、夜にらーめんを食べに来た時にはもう酔っぱらい状態、あまりきちんと味わえなかったのだ。

食券機の前で、背脂肉煮干し中華そば(810円)と背脂特製中華そば(910円)のどちらにしようか延々と悩む。前回は何を頼んだのだろう。今日は、いや、今日もお財布が心もとなく節約したい気分なのだけれど味玉が食べたい。特製の方じゃないと入っていないのだろうな。でも100円高いのか。「やっぱり特製じゃないと味玉食べられないかなー食べたいなーでもお金ないなーどうしよっかなー」などとぼそぼそ言ってみる。「特製にするから、味玉半分あげるよ!」とひかるくん。「その言葉を待っていたよ!」と私。なんてひどい話だ。とんでもない女だ。

黒光りするカウンターに並んで座る。カクテル片手にいつまでも語り合っていたくなるようなおしゃれな空間。けれども目の前で着々と作られていくのはカクテルではなくらーめんなのだ。贅沢きわまりない。

銀色のトレイに乗って器が運ばれてきた。湯気ごと食べたくなるような、煮干しと醤油のいい香り。

最初にスープを一口いただく瞬間って、たまらない。強い刺激のないやさしい味わいながら、気づけば背脂の濃厚さに包まれている。私のおなかが欲していたとおりの味だった。ライスに合うようなパンチのきいたスープも好きだけれど、たまにはこんな風に煮干しと戯れたい。どうしてだろう、私は子供の頃こういったらーめんを食べて育ったわけではないのに、この香りに懐かしさを覚える。夕焼け小焼けのメロディに背中を押されるようにして歩いた、夕方の風景をふと思い出す。

わしわしと固いねぎの食感と、するりとのどの奥に消えていくやわらかな麺の食感が対照的。豚バラのチャーシューは薄くて、少し固め。たくさん入っているので私のもったいない病も発症せず、チャーシューで麺をくるりと巻いたりネギを巻いたりメンマを巻いたりしながらぱくぱくいただいてしまう。

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ひかるくんが頼んだメンマご飯。少しだけもらった。白米が進む味。

あ、味玉も半分もらった。嬉しすぎてさっさと食べてしまい、その時の感想を覚えていない。うん、美味しいよりも嬉しいだった。でもいつまでも搾取するわけにはいかないので、次は自分で特製を頼むね。

さいころラーメン / 中野駅新中野駅東高円寺駅

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