ごはんをこよなく愛する人達は、人生における食事の回数は限られているから云々、などとよく話しているような気がする。もちろん私も例には漏れない。懐具合が寂しくたって、日々の食事はおろそかにしないのだ。財布に漱石さんが一人おわせば美味しいラーメンを食べに行ける。
それでも最近は本当に本当に涙が溢れそうなほどの金欠で、大人しく家でトーストと野菜スープでも食べようかという思いが一瞬よぎったけれど、足はやはりラーメン屋さんへと向かった日曜の昼下がり。美味しい鶏白湯を自作するために、プロの鶏白湯ラーメンを研究しようと三軒茶屋の藤しろへ行ってみた。
ラーメンを待っていると、お店の方が「使いますか?」とたくさんの色ゴムが入ったケースを差し出してくれた。私はいつもあまり気にせず髪を振り乱しながら食べてしまうタイプなのだけれど、せっかくなのでゴムをいただいてちょこんと結わえてみた。想像以上に丼に覆いかぶさりやすくなって感動した。
藤しろのラーメンは、白湯にしては澄んだスープの上に焦がした薬味が点々と浮かぶ、特徴的な見た目をしている。丸鶏や鶏ガラで出汁をとっており、タレには削り節や煮干しがふんだんに使われているのですって。魚介出汁でタレを作るというのは、自作ラーメンの時にもぜひ真似してみたい。また、ローストした牛すじからも出汁をとっているところが面白い。食べてみるまで味があまり想像できず、わくわくする。
あぶらがとけこんだスープはまろやかでコクがあり、ほのかに香ばしい。麺とスープの相性が良くてするすると食べられるラーメンなのだけれど、あっさりしすぎていないところが休日向け。スープをすすっていると、にんにくが時々パンチを効かせにやってくる。歯ざわりの良いタケノコの、フレッシュな香りがツボだなあ。しゃきしゃき九条ねぎも贅沢。東京のスーパーではなかなか買えないので。
卓上にはレモン生姜。これを楽しみにしていたのだ。レンゲに麺とスープを少々すくって、上からそっとレモン生姜を乗せてみる。爽やかな酸味があぶらを押し流し、一気に夏向けの味に様変わりする。そっと主張する生姜の辛味がこれまた良かった。
藤しろは、お店の方の笑顔が印象に残るお店だったなあ。今度からはラーメン用シュシュを持ち歩いて髪を束ねてみようかな。
藤しろ 三軒茶屋店 (ラーメン / 三軒茶屋駅、西太子堂駅、若林駅)